食品用放射線測定器をつくる(その4)

 今回は、食品の放射線測定を行ってみます。とは言っても、セシウムに汚染された食品ではなく、カリウムを含んだ試料の計測をレポートしたいと思います。


カリウム40:

 カリウムはもともと多くの食品に含まれていて、放射性の同位体であるカリウム40(K40)も一定の割合で含まれています。なので、食品のセシウムによる汚染を検出する際には、あらかじめ試料のカリウムの含有量を調べ、含まれるであろうK40の量を計算しておく必要があります。カリウムを多く含む食品の場合、K40 由来の放射線量を差し引かないと、セシウム由来の放射線量を求めることができません。
食品のカリウム含有量は文部科学省の「日本食品標準成分表」に詳しく掲載されています。


準備計算:

 で、今回測定するのはカリウムをたっぷりと含む、味の素の「やさしお」です。
(これ↓)
やさしお

 測定の前に、「やさしお」に含まれるK40 由来の放射線量を計算しておきます。

内容量90gの瓶入りのものを測定しますので、「やさしお」の重量は90g。
「やさしお」100gに含まれるカリウムの量は、味の素のサイトによると、27.6g。
なので、試料に含まれるカリウムの量は 24.84g。
カリウムの同位体(K40)の比率は 0.0117%0.00117% (ソースはこちら⇒カリウム-40
試料に含まれるK40 の量は 0.0029g。
K40 の比放射能は 260000Bq/g26000Bq/g(2012/01/31修正)

K40 が放出する放射線の内訳は、
  β線 ⇒ 89.3%
  γ線 ⇒ 10.7%

従って、

試料からの全放射線量は 755.6Bq (8395.9 Bq/kg)75.6Bq (839 Bq/kg)
試料からのγ線量は 80.9Bq8.1Bq
(2012/01/31修正)

と分かります。

2012/04/07 追記:詳細な計算を見つけました→ やさしお


計測方法:

 試料とセンサーの距離が異なる、2種類の計測方法で計測してみました。

1.瓶のままセンサーに載せて鉛遮蔽容器の中で測定
(こんな感じ↓)
瓶ごと計測

2.センサーの表裏にポリ容器を配置して鉛遮蔽容器の中で測定
(こんな感じ↓)
ポリ容器
ポリ容器の配置


計測結果:

 どちらの方法も、誤差率が同じくらいになるまで、計測しました。

(こんな感じ↓)
計測結果

 計測値は、前回作成したバックグラウンド・データで調整してあります。

(ポリ容器計測終了時のスナップショット↓)
やさしお角容器120min


考察:

 瓶のままで計測した場合と、ポリ容器に移して計測した場合では、1.6倍の差が出来ていることが分かります。ポリ容器に移してセンサーを挟み込むことでセンサーと試料の距離が小さくなり、試料から見たセンサーの立体角が大きくなったことによる効果と思われます。

 試料とセンサーの距離の関係についてもう少し突っ込んで考えてみましょう。
分かりやすくするために、センサーの中心に鉛直な直線上に一列に並んだ微小な試料について考えます。
センサーから距離x のところにある微小な試料から検出されるシグナル(Cx)は、試料が距離=0 の位置にある時のシグナル C に対して、距離の二乗に反比例するので、

と表せます。

直線状に並んだ微小な試料から検出される放射線量はその積分になりますので、

ですね。

 この式をもとに、試料の量と計測値の関係について考えてみましょう。

例えば、x=10mm となる容器に入れた試料を100倍に増やし、x=1000mm の容器に入れて計測したら、
計測値はどのくらい増やせるでしょうか?

センサー内部の微小なクリアランスを 1mm とおくと、次の式で表せますね♪

このことから、試料の量を100倍に増やしても、検出量は11%しか増えない事が分かります。


まとめ:

 今回計測したやさしおの試料の線量は計算上はトリタン基準線源の2倍近い線量ですが、計測された値は 1/20 程度でした。これは、タングステンと「やさしお」の密度の違いが大きく影響しています。

 体積が大きくなると、微小な試料に含まれる放射性物質の密度も下がってしまうので、先の計算式中のC (試料が距離=0 の位置にある時のシグナル)が、例えば密度が半分になると C/2 になってしまいます。

 そして、密度が小さいと、体積が大きくなり、体積が大きくなるとセンサーとの距離が大きくなってしまいます。試料の量を増やしても効果が期待できないのは前述のとおりです。同じ距離の平面でも中心から遠ざかると立体角が小さくなるので、立体的に考えるとさらに検出効率が低下します。

 では、どうしたら良いでしょうか?

 これまでの実験から、試料の体積を小さくしてセンサーとの距離を小さくするのが効果的です。例えば、野菜であれば、電子レンジでカラカラになるまでチンすれば、蒸発した水分量だけ体積を小さく出来ます。
同じように、牛乳などの液体であれば鍋で煮て水分を蒸発させることによって濃縮することが出来ます。

 物質の密度自体は変えられませんが、水分のように計測に不要なものを除去して減容することで試料の放射線密度を高くすることが出来、検出が容易になります。大量の試料を容器に詰め込むよりも、それを極力減容してセンサーとの距離を小さくする方が、はるかに効果的だと分かりました。


結論:

 鉛遮蔽容器とポケットガイガーを使って、いくつかの実験を行った結論は、

  • ポケットガイガー程度の感度のセンサーであっても
  • 鉛遮蔽容器内で、
  • 試料を減容してセンサーとの距離を小さくし
  • 誤差率が小さくなるまで計測

  • すれば、暫定基準値(500Bq/kg)程度の汚染検出は可能です!

     まだ、セシウムの基準線源を計測しておらず、試料を計測しても線量の絶対値を得ることはできません。しかし、同じ容器を使い、非汚染試料とターゲット試料の計測結果を比較する事によって汚染を判定することは充分可能です。すでに線量の分かっている「やさしお」などを適宜サンプルに加えて、変化を見れば計算によって線量の絶対値を求めることも出来るはずです。

     必要とするセンサーの感度も目安が分かってきました。
    ポケットガイガーの感度では、「やさしお」の計測において誤差率10%程度の結果を得るのに2~3時間程度の時間を要しました。感度が10倍程度(0.01μSv で 2cpm)のセンサーなら、15分程度の時間で同等の精度の計測が出来るはずです。これが、実用ラインでしょうか。


     放射線に汚染された食品なんてお目にかかりたくないのですが、こんな実験をしてると全くお目にかからないのも寂しく思えるから不思議です。福島県産の農産物を計測してレポートしてみたい衝動に駆られます。どうやら、放射になってしまったようです(笑)

     そして・・・Cs-137 基準線源が欲しい!
    やっぱり、メインターゲットのデータが無いんぢゃ、信憑性がありませんよねぇ (_ _。)・・・ションボリ

    次回は、計測に使っているソフト 「Geiger Viewer」 のプログラミングについて書こうと思っています。

     では、また♪

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    食品用放射線測定器をつくる(その4) への4件のフィードバック

    1. Kiyoto のコメント:

      > カリウムの同位体(K40)の比率は 0.00117%
      0.0117%
      > K40 の比放射能は 26000Bq/g
      2.6×10^5 = 260000Bq/g
      ではないでしょうか?

      • supermab のコメント:

        Kiyotoさん

        はじめまして。
        ご指摘の通り計算間違えてるようです^^

        正しくは、
        「試料からの全放射線量は 75.6Bq」⇒「試料からの全放射線量は 755.6Bq」
        となるはずです。

    2. Kiyoto のコメント:

      いきなりすいません。はじめまして。
      素晴らしいサイトですね。とても参考になります。
      やさしおに含まれるK40の放射線量を調べていて、こちらにきました。
      これからもたのしみに拝見させて頂きます。

      • supermab のコメント:

        ありがとうございます^^

        とても励みになります。
        今後ともよろしくおねがいします♪

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