ポケットガイガーをPCで使う(その4)

 ポケットガイガーに、CsI(Tl) シンチレータ を載せてみました。

 シンチレータは紫外領域にピークを持つものが多く、赤外領域に感度ピークをもつPINフォトダイオードで検出するのは相性が悪いのですが、CsI(Tl) は 540nm にピークがあり、PINフォトダイオードによる検出に比較的適したシンチレータのようです。

 CsI(Tl) シンチレータの発光スペクトラムと、ポケガのダイオード(BPW34?)の受光感度グラフをデータシートで見るとピークがズレており、ベストマッチとは言えませんが、ラップしている領域のシンチレーション光は検出できるはずです。サイズもまったくマッチしませんが…気にせず取り付けてみました(笑)

シンチレータの取り付け:

 CsI(Tl) は潮解性があるので、防湿が必要です。防湿とシンチレーション光が効率よくダイオードに入るように反射させるために、PINフォトとの接合面以外の5面に透明な接着剤でアルミホイルを貼り付けました。

(下面と2側面まで貼り付けたところ↓)

※ストロボの光で励起されたのか(?)真っ白に光って色とびしてしまいました。

取説では研磨面をダイオードに向けるとありますが、面の状態については逆の意見の書かれた論文もあります。今回は取説どおりに研磨された面をダイオードに向けて取り付けてみました。

「えいやっ!」って感じの取り付け方ですw

(こんな感じ↓)

※:ケースのシンチ格納部が異様にでかい点は気にしないでください。

 ポケガ搭載のPINフォトダイオード8個のうち、3個にまたがるように搭載しました。シリコンオイルをPINフォトダイオードの表面にたらして、シンチレータを載せます。ずれないように押さえた状態で、シンチレータの周囲と、基盤との隙間に接着剤を充てんして密封しました。

 ようするに載せて周囲を接着しただけw こんなんで良いのか?若干不安ですが。。。(笑)
※:使用したのは初期型です。最新のポケットガイガーは可視光カットのPINフォトダイオードが使われているようです。

シンチレータ取付後の計測結果:

 食品用放射線測定器をつくる(その3)で示した計測結果に 7.CsI(Tl) シンチ を追記しました。

(こんな感じ↓)
シンチ計測結果

 1. と 7. を比較すると、CPM が約3.5倍となっているのがわかります。
とは言っても、さてはて…3.5倍とは、妥当なものなのか?

考えてみました♪

考察:

 まず、立体角がどの程度変わったのか簡単に図解して考えてみました。
厚みが無視できる正方形のセンサーと、一辺が同じ長さの立方体について考えます。センサー下面の中心から同じ距離の円を書き、円上の各点からセンサーを見た時の角度を図示してみます。
ラフですが、0~90°まで15°刻みで角度寸法を入れました。

(こんな感じ↓)

 それぞれの角度の平均の比率から、立体角は約2倍になることがわかります。
上図はR=100の時を示しています。Rが大きくなってもその比率はあまり変わらず、小さくなると比率が大きくなります。たとえばR=50の時は2.14倍になります。空間線量の測定では、線源との距離が充分に離れていると思われるので、立体角は2倍になると考えて良いと思います。

 つぎにポケットガイガーのPINフォトダイオードの受光面積 2.65 x 2.65 x 8(個) ≒ 56 に対してシンチレータは100 ですので、面積比は1.8倍です。

 面積が1.8倍、立体角が2倍なので、1.8 x 2 = 3.6倍になり、これが元の能力に加わるので、検出能力は4.6倍になる計算です。

シンチレータの面積に対して、シンチレータを載せた3個のダイオードの受光面積は 21% ですので、シンチレーション光の21%しか受光していないというラフな取付を行った割には、計算値の8割程度まで感度が向上しています。

 これはちょっと驚きです。どういうことなのでしょうか?
(上の計算や考え方が間違っている事も充分ありうる訳ですが…)

 トリタン基準線源を測定して波高データをCSV形式で保存したものを、Excel でグラフにしてみました。
2回の測定結果とその合計値(黒い線は合計値の移動平均)のグラフです。

(こんな感じ↓)

 波高のピークがあいまい…というよりほとんど見えませんw

推察:PINフォトダイオードの感度ピークとシンチレータのピーク波長のズレや、シンチレータの取り付け方は、CPM値の増減よりも分解能に大きく影響していて、数はとれるが精度は悪い状態になっていると思われます(強い放射線も弱いシンチレーション光として低い波高にカウントされている)。

 CsI(Tl) のピーク波長540nmに感度ピークの近い10mmx10mmのPINフォトダイオードを選定し、ぴったりと取り付ければ感度・分解能ともに改善出来そうです。分解能が高く正確な波高が得られれば、少ないサンプルでも明確なスペクトルを得られるかもしれません。

問題点:

 1.検出した波形を見ても、放射線がダイオードに直接入射して発生したものなのか?シンチレーション光を捉えたものなのか?区別できません。パルス数をカウントするだけであれば良いのですが、波高分布データから核種を特定しようとした場合に問題かもしれません。放射線がダイオードに直接入射した場合と、シンチレータでとらえた場合の二種類の検出方法で検出されたデータが混在している状態となっているからです。

 2.また、シンチレータのど真ん中に命中(?)した場合と、かすめるように当たった場合では波高が違うはずです。かすめるように当たった放射線については、エネルギーの小さなものとして検出されてしまい、分解能を低下させるかもしれません。

 この辺の問題は、幾つかの核種の基準線源で校正しながら統計的に解決するしかないように思えます。

まとめ:

 食品の測定では を判別する必要があり、極論すればこの2つが明確に特定出来れば良いわけです。そのためには、CPM値もさることながら、分解能が重要だと分かりました。分解能を改善してきれいなスペクトルを取れるようにしたいものです。

 最後は、キャリブレーションの精度が大切なので、
…そろそろ の校正用基準線源が欲しいですね~。

 次回は、RadViewer をバージョンアップしたので、変更点と使い方について書こうと思ってます。

では、また♪

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